新型コロナウィルスを知って対策を考える

自由にマスクも無くどこにでも行ける生活の良さがよくわかる状況が一転、こんなに続くとは考えても無かった新型コロナウイルスについて紹介したいと思います。新型コロナウイルスは通常のインフルエンザウイルスの大きさよりも 2倍以上、HIVC型肝炎ウイルス(HCV)よりも3倍も大きいRNAウイルスで弱毒化に繋がる突然変異が少ないのです。レトロウイルスはインフルエンザや HIVHCV の様に変異しやすいのと、ウイルス内の機能の差がいわれています。分類をしてみると以下の通りとなります。

ヒト呼吸器に感染するコロナウイルスには HCoV-229EOC43NL63HKU-1 4 種と 2002 年に発生した SARS コロナウイルス(SARS-CoV-1)、そして、2012 年発生の MERS コロナウイル(MERS-CoV-1)、さらに今回の新型コロナウイルス SARS-CoV-2 (COVID-19)があります。今回の SARS-COV-2 型は β-コロナウイルス属に属する物と言います。

HCoV-229ENL63OC43HKU1 は呼吸器系気道上部で感染し比較的軽くすみます。SARS-CoV MERS-CoVSARS-CoV-2 は下気道で増殖し重篤な肺炎を発症し致死的となる事もあります。ヒト には約 22,000 個の遺伝子があります。今日、SARS-CoV-2 のたった 15 個の遺伝子に世界中が対応に難儀している事自体、感染症への対応の甘さを改めて感じているところです。SARS-CoV-2 はアンジオテンシン変換酸素 2(ACE2)を造る細胞に入って増殖し、ACE2 の機能に障害を与えてしまいます。基礎疾患として高血圧、心血管疾患、慢性呼吸器疾患、癌などがあります。特に高齢者ほど致死率が高いのは ACE2 の機能障害にあるのかもしれません。ACE2 は①副腎でのアルドステロンの分泌促進 ②腎での NaCl の再吸収の増加 ③口渇、利尿ホルモン(ADH)の分泌促進 ④細動脈収縮など血管内の自由水を増加、灌流圧の維持など生体の安定に主要に関与する酵素を生産する機能の異常を意味しています。

SARS-CoV-2 について温度と安定性についての報告があります。4℃22℃37℃56℃および 70℃で調べています。4℃では大変安定で、22℃では 1 日はほぼ安定、その後徐々に感染力は低下、37℃では 6 時間までは安定、56℃では 10 分で弱り、70℃では 5 分で感染力は測定限界以下とされ ています。8 月は日中連続 35℃以上でも感染者数が減少して来たという報告はありません。それは感染源となる場所は大概エアコンが良く効く場所である為と考えられます。

サイトカインストームという言葉を耳にされた事があると思います。SARS-CoV-2 という外来異物の侵入で免疫系が反応し、多量のサイトカイン類を放出する免疫系の迅速な確立と防衛体制が、基礎疾患のあるヒトには逆に制御不能な多臓器炎症を誘発したと考えられます。

 1 .に示した様にどの地域においても COVID-19 の感染者数は従来の季節性インフ ルエンザ患者数より少ないです。また、日本での季節性インフルエンザの死者数は 2020 8 月末 時点のコロナウイルス死者数(約 1,300 人)よりも多い 2,000 人近い数字ですが、特に問題視されることはありませんでした。マスコミの報道でコロナウイルスに関するものが無い日は無く、勿論、 治療薬もなくワクチンも開発中で恐怖感は大きいと言えますが、過度に恐れすぎないことが重要です。どうしても、密な中に行く必要のある時はマスクの着用や帰宅後の手洗いの励行だけでもインフルエンザだけでなく色々な感染症の防御になる事が期待されます。

通常、インフルエンザウイルスは冬季に増殖し、春になれば増殖の終息がみられますが、今回の SARS-CoV-2 はやはり過去の経験に合わない性質のウイルスで新型といわれる所以であるのかもしれません。通常ウイルスの感染力の変化は TCID5050Tissue Culture Infectious Dose,培養細胞のうち半分がウイルスに感染した時のウイルスの濃度)で示しています。また一度 SARS-CoV-2 に感染しても再度感染する患者も出ているので、抗体の持続する時間も大変短く、従来の概念と合わないウイルスと言えます。60 日も経過すると体内で抗体は失活してしまうとも言われています。最近の報道を見ていますと、感染の経路不明や無症状のヒトが増加している事は自然に知らぬ間に免疫が出来たり消失したりし、今後も SARS-CoV-2 と共存して行くしか無いのかと思います。HIV の時を考えますと対処出来る医薬品が世に出てくるのは 45 年はかかりそうですし、ワクチンは変異が少なそうですが有効性と安全性の高いものが出ても抗体の持続性を考えるとあまり期待し過ぎない方が良いかもわかりません。

日頃から自身の免疫系が正確に作動する様な生活習慣、 特に食養生の重要性は増々高まって来ていると感じています。穀菽菜果 こくしゅくさいか (穀物、豆類、野菜類、果物)を主 とした食品の重要性は中国では古くから言われています。

理事長/医学博士 山原 條ニ

 

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